窓際のブラウニー



「だめだ・・・真千子さんは、大事なものを捨てられない。」




田所さんは、もっと強く抱きしめた。




「真千子さんを奪いたい。でも、あなたは、家族を愛している。愛していないなら、とっくに僕はあなたを連れ去っていますよ。」




言葉とは裏腹に、私を抱きしめる腕の力がどんどん激しく強くなる。




「真千子さん、あなたが好きだ。」



「私も田所さんが好き・・・」




私の「好き」という言葉を最後まで言わせてはくれなかった。



私の唇は、田所さんの唇で覆われた。




初めてなのに、今までも何度も口付けを交わしたかのように自然・・・


私と田所さんはキスをした。




この現場を誰かが見ていればいいと思った。


夫でもお義母さんでもいい。


私があの家に帰ることができないくらい、誰かに責められたい。





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