窓際のブラウニー



田所さんは、空を見ながら何度も私の手を握り直し、その大きな手から愛が伝わってくるのに、私は寂しさを感じた。



「あなたは強い人だ。本当に僕だけを愛していたら、何もかも捨てて僕の元へ来る。そういう人だ。だから僕は奪えなかった。あなたの中に残る家族への愛が見えたから・・・ご主人を愛しているからこそ、僕と比べてしまうこと、僕に惹かれていること・・・僕にはわかってしまったんだ。」




それは違う、と言えなかった。



田所さんは私自身よりも私の気持ちを知っていた。




私は心の中にある夫とお義母さんへの嫌悪感と、それ以上の愛情に気付かないフリをしていた。



私は田所さんを求めているようで、田所さんの優しさを、夫に求めていたのかも知れない。




「私も勇気がなかった。本当は飛び込みたかった。でも勇気がなかったんです。田所さんが私を連れ去ってくれることを期待していた。会えなくなっても、あなたを想わない日はありませんでした。」



二人は流れる川をじっと見つめ、次から次へと目の前を過ぎてゆく桜の花びらに自分達を重ねていた。





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