窓際のブラウニー
「本気になれば、僕は今、真千子さんを抱きしめて、そのまま連れ去ることもできる。
本当は帰したくない。でも、それであなたは幸せになれない。憎んでいるはずのお義母さんとご主人のことを心配して、笑顔を失くすだろう。そして、僕の元から去って行くよ。」
何も言えなかった。
私が田所さんに出会ってから、何度も何度も想像したこと。
このまま田所さんの胸に飛び込んで、その後、どんな気持ちになるのか・・・
何度も考えた。
結局、答えなんて出なかったけれど、
想像の中の私は、お義母さんのことを案じていた。
お義母さんは、私がいなくなってどうしているだろう。
お義母さんは、私がいつも買っていたクリームパンを自分で買いに行ってるのだろうか。
お義母さんは、一人で昼間、誰と話しているんだろう。
夫のことよりも、お義母さんの笑顔ばかりが浮かんで、そのまま涙が出て、想像することをやめた。