窓際のブラウニー
壁にかけた時計が、いつもよりも早く動いているように感じた。
昔、一緒に買った時計。
あの頃、何をしていても楽しかったよね、私達。
そんな頃もあったんだよね。
息子が生まれた時に、二人で記念に買ったんだよね、この時計。
「俺、男としてお前に見てもらいたかった。同居も原因だと思うが、いつからかお前に男として扱われていないと思い始めた。」
下を向いたまま、小さな声で絞り出すように話した。
「だから、俺を男として見てくれる女性に惹かれるようになった。まぁ、飲み屋の女性ばかりだけど。彼女達は、それが仕事だから俺に優しくするんだってわかっていたが。お前が俺を見てくれない寂しさを、他の女性で埋めていた。結局、俺はお前を求めていたのかな。」
夫は一気に話すと、また天井を見上げた。
両手を頭の上で組み、ふ~っと息を吐いた。