窓際のブラウニー
『どうぞ・・・』しか聞いていない彼の声だが、
顔から想像する低い声ではなく、高めだったような気がする。
愛嬌のある声と笑顔。
くしゃくしゃっとした笑顔がかわいらしい。
次のバス停までの間、私は彼を見つめ続けた。
きっと、気付いてる。
私の視線。
でも、彼はもう振り向かない。
次に目が合うと、明らかにお互い意識してしまうから。
窓から差し込む光が彼の頬に当たる。
次の乗り場で、何度か話したことのあるおじいさんが乗ってきた。
お義母さんに声をかけたが、返事をせずに、窓の外を眺めたままだった。