窓際のブラウニー
「ホワイトデーのお返しにみんなに作ってきたんですが、作りすぎちゃって・・・」
ブラウニーを見つめたまま固まった私に彼は言った。
なにやら甘い香りがすると思ったら、前の方の席で嬉しそうにブラウニーを頬張るおばあさんがいた。
「あ、ありがとうございます!!」
それだけ言うと、私はお義母さんの腕を掴んだ。
「お義母さん、甘いもの好きですよね。食べましょうか」
私の手のひらにチョコンと乗ったブラウニーを乱暴に奪ったお義母さんは、
すぐに口へ運んだ。
「あら・・・美味しいわね。」
機嫌が直ったのか、お義母さんは、とびっきりの笑顔を向けた。
いつもそうして笑っていればいいのに。
いい笑顔を持っているのに。
「じゃあ、これ奥さんにもどうぞ!」
もう一度私の手のひらに乗せられた。
ブラウニー。
自分で作ったことなんてない。
美味しそうな茶色い色をしたブラウニーが
バスの中を甘くさせた。