窓際のブラウニー
風呂場の排水溝に貯まる髪の毛をゴム手袋もせずに掃除する。
この風呂場は湿気が多い。
毎日気を付けていても、カビが繁殖する。
少なくなったシャンプーに水を足したのは、お義母さんか夫のどちらかだろう。
結婚したての頃から、その癖は直らない。
曇った鏡に映る自分の顔を見る。
最近、自分の為に時間を使ったことがあるだろうか。
夫の為、お義母さんの為、家の為。
私の為に何かをしてくれる人はいない。
私自身すら私の為に何もできていなかった。
風呂場の窓のすぐ横に、隣の家のキッチンがある。
甘い香りが漂う。
小さな子供のいる新婚家庭らしく、平日の昼間はよくお菓子の匂いがする。
自分でケーキやクッキーを焼くのが好きなお隣さん。
最近、そんな余裕もなかった。
作ってみようか・・・
ブラウニーを。