窓際のブラウニー
「おはようございます!!足元気を付けてください!」
爽やかな笑顔と共に、彼の鮮やかなブルーのセーターが目に入る。
夫は絶対に着ないような服。
差し伸べられた手をまた無視したお義母さんは、無理して手すりに手を伸ばす。
慣れているのか、彼は悲しい顔もせずに笑顔でお義母さんに微笑んだ。
「おはようございます!」
私に向けられた笑顔も、とても優しい。
「あ!!」
彼に見とれていた私は、階段に足を滑らせた。
さっきお義母さんに差し伸べた手と同じ手を私に向けた。
「すみません…」
その手は、私の知っている手ではなかった。
温かく、
がっしりとしていて、
でも柔らかい気持ちの良い感触だった。
恥ずかしそうに目をそらす私に、彼が言う。
「お疲れ様です。」
小さな声で、そっと…
わかってくれる人がいる。
私の苦労を理解してくれる人がここにいる。
それだけで、救われた。
わざとらしく濡れた右肩をハンカチで拭くお義母さん。
そのハンカチで曇った窓を拭き、外を眺める。