窓際のブラウニー
まだ
ドキドキできるんだ、私。
まだ
こんな気持ちを忘れてはいなかったんだ。
ドキドキするって何年ぶりだろう。
さっきまでただの連絡の道具としか思っていなかった携帯電話が
急に宝物のように大切で、
愛しいものに見える。
握り締める手の温もりのせいで、
携帯の画面が曇る。
細い窓から
ヒューと音が聞こえた。
【幸せになりたい、と言う真千子さんの叫び声が聞こえました。頑張りすぎないで。僕が力になりますから】
夫から20年間で言われた全ての言葉よりも
私はこの短いメールに救われた。
まだ2度しか会ったことのない人がどうして私の苦労や虚しさをわかってくれるのだろう。
田所さんは私の全てを知っているのではないか、と思わずにはいられない。
このメールに返信するかしないかで、この先の人生が大きく変わるような気がした。