窓際のブラウニー
その日から
毎日メールの交換をするようになった。
【おはよう、真千子さん】
【おはよう、田所さん】
それだけで、いつもの朝と違った朝になる。
機嫌の悪い夫が、お義母さんにだけ優しい言葉をかける。
目玉焼きが半熟じゃない、と怒り出す夫を見て、お義母さんは嬉しそうな顔をする。
負けない。
私は一人じゃない。
私には味方がいる。
【お昼ごはんは何?】
【お義母さんと、うどんを食べました】
たったそれだけのメールが
こんなにも人を支えてくれるんだ。
メールは
電話と違って声を聞くわけではないのに、
なぜか、とても身近に感じてしまう。
すぐそこに田所さんがいるような
満たされた気持ちになった。
明日は水曜日。
私は自信がない…
何事もなかったかのように
平然と田所さんと挨拶ができるとは思えない。
きっと
私は恋する少女のように
顔を赤らめて、目が合うだけで心臓が飛び出るほどに
ドキドキしてしまうだろう。
【明日、会えますね。真千子さんの笑顔が見れるといいな】
【田所さんの笑顔、私も見たいです】
隣で寝息を立てる夫に
申し訳なさを感じながら…
おやすみメールを送る。
私は間違っている?
でも、
もう踏み出した一歩は
引き返すことはできない。