窓際のブラウニー


次のバス停でバスから降りた田所さんが、まるでドラマのように

私に向かって走ってくる。



たかが、担当しているおばあさんの付き添いの私の為に

必死になって走るその姿に私の気持ちは抑えられなくなった。



『田所さんが好き』…その想いが体中から溢れてくる。



バスは、もう見えないくらい遠い。



誰も田所さんが向かった先を知らない。




黒いセーターの腕の部分に白いラインが2本入っていた。

Gパンの色落ち具合が、私
好みだった。


走ってくる彼を観察している自分と、

その胸に飛び込んでしまいそうな自分がいて、

私はどちらが本当の自分なのかわからなかった。



メールのやり取りしかしていないのに、

田所さんとの距離がすごく近くなっていた。





一週間前に会った時とは全く違う気持ちで、

お互い、目を見るだけで気持ちがわかってしまうようだった。





「真千子さん、バス降りちゃった…」








< 75 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop