窓際のブラウニー
次のバス停でバスから降りた田所さんが、まるでドラマのように
私に向かって走ってくる。
たかが、担当しているおばあさんの付き添いの私の為に
必死になって走るその姿に私の気持ちは抑えられなくなった。
『田所さんが好き』…その想いが体中から溢れてくる。
バスは、もう見えないくらい遠い。
誰も田所さんが向かった先を知らない。
黒いセーターの腕の部分に白いラインが2本入っていた。
Gパンの色落ち具合が、私
好みだった。
走ってくる彼を観察している自分と、
その胸に飛び込んでしまいそうな自分がいて、
私はどちらが本当の自分なのかわからなかった。
メールのやり取りしかしていないのに、
田所さんとの距離がすごく近くなっていた。
一週間前に会った時とは全く違う気持ちで、
お互い、目を見るだけで気持ちがわかってしまうようだった。
「真千子さん、バス降りちゃった…」