窓際のブラウニー
「真千子さん、ここにあった箱はどこ?」
ベッドから起き上がったお義母さんが、窓際の机の上を指差した。
確か、先週お隣の奥さんからもらったお饅頭の箱が置いてあった。
「お義母さん、ごめんなさい。饅頭の箱ですか?昨日のゴミで捨ててしまいました。」
歳を取ると、いろんな物に執着するようになる。
捨てる前にいつも聞くようにしていたのだが、あの箱はいらないと思っていた。
お義母さんは、ため息をついた。
小さな声で、あの箱を何かに使おうと思っていたのに…と言っていたが聞こえないふりをして部屋を出た。
息が詰まる。
この家は安らぎがない。
何が楽しくて生きているのかわからない。
そうか、楽しみなんてないんだ。
私にあるのは、今この生活をただ過ごしていかなくてはいけないという義務だけ。