窓際のブラウニー


「真千子さん、ここにあった箱はどこ?」


ベッドから起き上がったお義母さんが、窓際の机の上を指差した。


確か、先週お隣の奥さんからもらったお饅頭の箱が置いてあった。



「お義母さん、ごめんなさい。饅頭の箱ですか?昨日のゴミで捨ててしまいました。」



歳を取ると、いろんな物に執着するようになる。

捨てる前にいつも聞くようにしていたのだが、あの箱はいらないと思っていた。



お義母さんは、ため息をついた。


小さな声で、あの箱を何かに使おうと思っていたのに…と言っていたが聞こえないふりをして部屋を出た。




息が詰まる。



この家は安らぎがない。




何が楽しくて生きているのかわからない。


そうか、楽しみなんてないんだ。



私にあるのは、今この生活をただ過ごしていかなくてはいけないという義務だけ。









< 9 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop