一度の保証(短編集)
「あたし、店 辞めへんから。
でも、裕馬と連絡取りやすいように、店移るわ。
一階の系列店に」


「留衣ちゃんありがとう」


「あんたの為ちゃうで?
久美のやし。
裕馬が、あたしに何も言ってくれんくっても、連絡とってたら何か変わるかもしらんし」


そう言い、あたしは裕馬の居る方と逆を向いた。


「分かってる。
留衣ちゃん、こっち向いて?」


あたしは、顔をゆっくり裕馬に向けた。


「はい、向いたけど」


裕馬は、にかっと笑ってキスしてきて言う。


「俺も、ココア飲もっと」


そう言い、カップを口に運んだ。


あたしは、裕馬に言う。


「裕馬、お願いやから、久美にひどいことはせんとって。
嘘つくなとは言わんけど、ひどい嘘は やめたって」

裕馬は、何も言わず、あたしを見て にっとココアを飲みながら笑みを浮かべ片手であたしの手を握ってきた。


あたしも、ぎゅっと握り返した。


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