一度の保証(短編集)
あたしと裕馬は、ボックスになっている機械の前にいた。


「裕馬、克也がみんなにゆうてる生年月日知ってる?」


「5月16日やで」


「絶対?!」


「ぜーったい!何度も色んな子にゆうてるの聞いたけど、みんなにそうゆうてた」


「分かった。0516やな」


あたしは、言葉にしながら打つ。


暗証番号が違います


「あかんわ、違うわ。やっぱり違うんやなぁ」


「なんでやろうなぁ?」


「うん。あと一回しか間違われへん」


「なんで?」


「三回目も間違ったら、機械では手続きできんくなるもん。
久美は、病院やし、どうなるかわからんのに。
窓口本人じゃないとあかんやろ?
それにあほ克也は、判子無くしたゆうてるし」


「そっか…
なんやろな?
克也さんの西暦と日にちとか、西暦と誕生月とか?」

「そうかな?やってみる。どっちやろ?」


「留衣ちゃんならどっちにする?」


「うーん?誕生日の日にちかな?
月やと、12個しかないし」


「俺もそう思う」


「じゃあ、やってみるで?」


あたしは、丁寧に、間違わないよう四つの数字を押した。


暗証番号が違います


「あかん!もう終りや」
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