一度の保証(短編集)
あたしは、脱力するように言った。


「留衣ちゃん、あと一回やってみたら?
次は、よく考えて。
使えんくなったらなったでいいやん。
やってみよ?」


「でも…
数字思いつかんもん」


「ゆっくり考え。
留衣ちゃん久美ちゃんと友達やったんやろ?
久美ちゃんならどうするかとかない?」


「久美なら…?」


久美なら。

久美なら。


久美なら?


もし、好きな男がいて、夢あって、応援したいと思って、貯金する為に通帳作って…


その通帳は、きっと二人の輝かしい未来が詰まってるかのようにしか見えんくて…


愛してる男の為の通帳で…愛してる男の…
男ので…


「裕馬、打つわ!
ほんまに最後な!」


「え?留衣ちゃん?ほんま?もう?ちゃんとわかったん?」


「ううん、分からんけど…」


あたしは、裕馬の心配をヨソに、数字を押しはじめた。



0 6 1 4


「留衣ちゃんこれ何の?」

決定ボタン


金額を入力して下さい


「いけた!裕馬!いけた!」


「マジで?なんの数字やったん?!」


「久美の誕生日」


「そっかぁ。久美ちゃんの。でも、なんで?」

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