一度の保証(短編集)
ヒールも、高さのありそうなのをはいていて、大人ではないが、子どもにも見えず、女性とは言えないが、女の子とも言っていいのか、いい女への階段をかけ上がっているようだった。



「太一お兄ちゃん。本っ当にありがとう!
今日から お世話になります」



えりなは、行儀良く手を前にそろえ、さらさらの髪は、顔の前に落とされるようになり頭を下げた。



「よろしく。はじめは、気を使うかもしれないけど、徐々に慣れていってくれればいいから」



俺は、また たいして心にもない事を 爽やかに言った。



夕方まで えりなの家族と顔を合わせていて、かたずけもほとんど終らせる事ができた。



えりなの両親が、名残惜しそうにしながら帰ってゆき、とうとう兄妹 二人きりになってしまった。



「えりな、夕飯なんだけど、出前でもとるよ」



時間を見て言ってみる。



「あ、うん」



えりなは、鼻唄なんて歌いながらえりなの部屋として使わせる所を、持ち込んだ自分の物らで、えりな色へ染めていっている。



俺は、その様子を見て、ふっとこぼれるように出た笑いで言う。



「そんなに嬉しい?」



手を止め、俺を見るえりな
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