一度の保証(短編集)
里見が、目覚めてカレンダーを見ると、11月だった。


私は、確か 海にいて…
海で…
足を引っ張られたと思うと息ができなくなって…


どう考えてもその先を思い出せない


病院内であろうその部屋の外の廊下から人が行き交う声とざわつきが聞こえてくる。


うっすら扉の窓に黒い影ができたかと思うと、扉が開き、まっ白い色が目にとびこんできた。


眼鏡をかけた若い医師が、にこりと笑顔を見せると中へ入ってきた。


「中原 里見さん。目を覚まされましたか?ご気分はどうでしょう?」


「特に…は…」


訳の分からないまま話かけられ答える。


「お聞きしたい事があります。中原さんは、どこまで記憶されてますか?」


「あの!私は?
死んだんでしょうか!?」

「ええ、でも、今日 生還いたしましたので、もう大丈夫ですよ。
死因は、溺れたことによる窒息死でしたね」

「そう…です。
私は、友人と八月に入り、海に行っていました。
そこで、急に…
息ができなくなって」

「よく覚えていらっしゃいます。これまで調べていた限りでも、特に問題もないようですし、明日 退院していいですよ。
それでは」

医師が出て行こうと扉に向かう
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