一度の保証(短編集)
「里……見…!久しぶりね」


早苗は、堪えているらしき涙を指先に少しつけ言った。


「うん。早苗、ありがとう。私、なんて言っていいのか。たくさん話したいことがあるの。外に移動しましょ?」


「うん。待ってて!バッグを取ってくるから1階で待ってて」


「わかった」





私が待っていると早苗は、急ぎ足で一階に来た。


「おまたせ」


「うん。行こう」


私たちは、会社を出て歩き出した。


私は 我慢ができず早速話を持ち出した。


「早苗、生き返らせてくれたって聞いて、ありがとう。ほんとに、早苗がいなかったら私には生き返らせてくれるような人いなかったから」


「そんなっ そんな、いいの!それより、もう大丈夫なの?なんともない?」


「うん。もう平気。
ありがとう。
実はね、こうしてお礼も言いたかったんだけど、聞きたい事もあって…」


「何!?」


「海であたし溺れたって医者に言われて…」


「ええ、私も聞いて知ってるわ」


「早苗は、私が溺れたとこ見てた?」


「それが…。一瞬で里見が見えなくなったから… 」

「覚えてない?何か少しでも」


「うん」


「そう、ごめんね」
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