一度の保証(短編集)
早苗は、白ワインのコルクを抜いて、グラスとワインを里見が待っているテーブルに持ってくる。


「置く場所狭いわね」


早苗が、クスッと笑うと、うまくスペースを作り、ワインを置き、グラスを私の前に置き、注いでくれた。

「ちょっと料理買いすぎたわね」


私も、クスクスっと笑い、さっき二人で寄ったデパ地下での様子を思い出し言う。


「おいしそうなのたくさんあるから買いすぎちゃったね」


「そうね。では、乾杯」


私と早苗は、グラスを当たらない程度で同じ仕草を交す。


私は、一口飲み、ローストビーフ一枚に箸を伸ばし食べてから言葉を出す。


「早苗、さっきのことだけど…」


私が、早苗の方を向き言うと、早苗は、白ワインを飲み干したところで、二杯目を注ぎながら私を見て、私のグラスにも少し足してくれた。


「海でのことね?」


「そう、私…」


私は、先の言葉を詰まらせた。


すると、早苗が、私の隣に回ってきて、土下座した。


「ごめんなさい!!!
ごめんなさい!!
あたしなの… あたしなの!!
里見の足を引っ張ったのは…」


私は、早苗の言葉が信じられなかった。


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