一度の保証(短編集)
早苗の言葉を聞き、持っていたワインのグラスを、震わしながら、テーブルに置いた。


「どうし…て…?」


「里見と一緒にいると、すごく惨めに感じてて、自慢の友達なのに、一緒にいると私は、辛かった」


「何が辛かったの?
私、何かした?」


「何もしてないの。でも、でも…」


そう言い早苗は、泣き出した。


「でも、早苗が、私を生き返らせてくれた…じゃない」


「そう…よ、すぐにすごく後悔の嵐が襲ってきて、すごくすごく願った。
お願いだから 里見を生き返らせてほしくて。
里見の生還が…約束された時は、どうしようもなく安心して、あんなことしなければよかったと後悔ばかりして…」
「でも、どうして?どうしてよ?どうして私を…」


「里見が、羨ましかった。
日頃から、ナンパされてもみんな里見だけ見てちやほやして、あたしには、里見の事ばかり質問されるだけで。
海に行ったら、それは一層よく分かった。
ナンパどころか、里見と並んで歩いていたと思うと、突然姿がなくなり、振り返り見ると、前から歩いてきてた男に手を引っ張られ連れて行かれそうになってばかりで、すごく惨めになって…
ごめんなさい…」
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