一度の保証(短編集)
「それだけのことで…!?」


「里見にとっては、それだけのことと思うかもしれないわ。
でも、あたしは、里見が口説かれてる間 少し離れた場所で引き釣りそうな笑いを浮かべているしかないのよ。
それが、どれほど惨めか… 里見には、分からないわよ」


「でも、殺すなんて…」


「ごめんなさい。ほんとに私 どうかしてて。何でもするわ。だから、警察には言わないで…」


「早苗には、長く付き合ってもう結婚前提の人がいるじゃない。なのに、なのにどうして?!」


「そうだけど…
私、里見に女として嫉妬してたの。
嫉妬に歯止めがきかなくなって、いつかあたしの周りみんな里見に振り向いて行ってしまうんじゃないかって。そう思うと、なにかせずにはいられなくなっていってしまって…
ごめんなさい。本当に、本当にごめんなさい里見、許して…」


「許すなんて…簡単には…。なら、私も言わせて。
私だって早苗が羨ましいと思ったことたくさんあるわよ。
早苗には、将来を約束できている相手がいて、長い付き合いで。
私は、それに比べて、名前も知らない顔も覚えてない男ばかり集まってきて。
まともな相手もいなければ、結婚なんてほど遠くて」

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