一度の保証(短編集)
「桃華?拓哉を呼んで来てあげて」


リビングでテレビに夢中になっていると、ママがマドレーヌをオーブンから出し言う。


「は〜い」


あたしは、拓哉のいる二階まで上り、拓哉の部屋の扉をノックはせず、声をかける。


「拓哉、ママがおやつ出来たって」


「またマドレーヌ?僕いらない。おねぇちゃんにあげる。それに、来週は、学校の臨海学校だから、おなか出てたらクラスのみんなに笑われるもん」


来週から3泊4日で行く小学5年生の行事で、気にする弟


行き先は、海


はじめての友達との旅行に、ハシャギはじめている拓哉


「でも、ママは拓哉の為に作ってくれたんだよ?」


「違うよ。おねぇちゃんだっていつも一緒に食べてるでしょ?」


「そぅ だけど…」


拓哉と、ドア越しに言葉を交す。


あたしは、小さく溜め息をつき言う。


「分かった。ママにはおねぇちゃんから言っておく」

「うん」


拓哉の返事を聞くと、階段を下り、リビングに行く。ママは、いつでも食べられるように、拓哉の好きな牛乳に蜂蜜を入れたホットミルクを用意していた。

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