一度の保証(短編集)
「あ〜…、ママ?」


「なぁに?」


ママは、機嫌も良いのだろう鼻唄を歌いながら顔をあげた。


「拓哉 いらないって。来週は、臨海学校だし、それまでは気をつけてたいからって」


ママは、鼻唄をとめ言う。


「少しくらい大丈夫じゃない」


「あ〜うん。でも拓哉はいらないって…ぃっ」


「拓哉〜?たくや〜?」


「てたのに…」


ママは、あたしが言い終わるより前に拓哉の部屋をめがけ足を進めた。


すぐ二階から下りてきたママは、拓哉に断られたのか、無表情でスタスタ歩いてきた。


「あの、ママ?あたし マドレーヌ食べていい?」


「え?あ〜 いいわよ」


ママに聞いてからお皿を出し、アルミをはがして食べる。


「ママも食べようかしら」


「うん」


ママとテーブルに座り、甘いパンケーキをほうばる。


「拓哉が食べないならわざわざ焼かなくても、外でケーキでも買ってくれば良かったわね」


「そうだね」


あたしは、いつも通り笑顔でマドレーヌを、口の中で噛み砕きながら答える。


ほら… ほらね?拓哉。


おねぇちゃん言ったでしょ?


拓哉は、何も知らない。


分かってないんだよ…
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