一度の保証(短編集)
《貞司》


俺は横目で愛子を見ていて、愛子が、自分で買っていたお茶を飲むのを見てすぐ言う。


「飲んだな、愛子。
きっと薬嫌いなんだろうと思ったから、愛子の気付かないうちに、薬混ぜといてやったよ。
な?飲めただろ?」


俺が、そう言うと、愛子は、目を開けたまま倒れた。

俺は愛子の脈をみて死んでいると確認し、すぐさま愛子が生き返るよう想い願った。


俺の想いは、愛子を病院にとどけ二日で無事 生還が約束された。


愛子の死因は、毒殺だと思われていたが、愛子の自宅を調べたところ愛子本人が用意したものだと認められ、俺は 周囲から同情を浴びた。


俺は、愛子が目を覚ますのを待ちつづける。


まだ息のない愛子の顔をみながら、俺は愛子に話しかけた。


「これで同じだな…愛子
俺達は、これで本当に愛し合える…」


そう…俺は、ピアスを渡そうと愛子の手の平の粉末を見た時から、毒だと気づいていた。


愛子を生還させたのは、だれでなく俺だ。


3完
< 53 / 201 >

この作品をシェア

pagetop