* 禁断の果実 *
「は?、お前誰だよ」
あたしを抱き寄せてるやつの片割れが和の胸元を掴みあげる。
「離せよ」
冷たく見下す和。
その目付きに一瞬動揺しながらも
「あ"ぁ!?、なんだテメェ」
口調を強めにして
いかにも、ってかんじの威勢だけど…
和の視線に怯んでるよ、なんか。
そんなヤツとは対称的に恐れる様子一つ見せずに
「離せ、って言ってんの」
さっきより大きめな声で言って
襟元を掴む腕を意図も簡単に振りほどく。
振りほどいただけじゃなくて
その振動で地面に転がったバカ。
そいつから和へ視線を移すとじっとあたしを見てて
あー…
絡んでるヤツは自分で処理しろってことね。
「分かりました…」
「あ?」
腰に腕をいつまでもまわしてるヤツを見上げて
「ごめん、待ち合わせのヤツ来ちゃった」
作り笑いを向けてから
「…っ!」
急所を膝で蹴りあげる。
「楽しかった、ありがとね」
蹴った場所を押さえて苦し紛れな顔をするそいつを覗き込んでウインクをしてから
落ちてるスクバを拾って先に歩き出した和を追いかけた。