* 禁断の果実 *
「ちょっと、待ってよ」


強歩で進む和の肩に手をかけると








一瞬こっちを見てから



無言で進行方向へと視線を返す。












うわ、なんか機嫌悪い。





素直に手を引っ込めて


距離をあけようと和が歩き出す背中を見送ってると













「なにしてんの」


ぴたっと立ち止まって
冷たい視線を向けながら、




「早くしろよ」



ぶっきらぼうに片手を差し出す。









…ホント…ばか










和は不器用だ。



器用だけど器用じゃない。





優しさとか




素直に表現しようとしない。










何を恥ずかしがってるのかは知らないけど。















夕日に目を細めながら


和まで小走りで駆け寄って




差し出された手に指を絡ますと


ぎゅっと握られて





「帰るぞ」





顔をプイと背けながら


愛想なく言いはなった。



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