:Noah's Ark
ヒタヒタと聞こえないように、私たちは終わりへ向かう。
方舟はブリキでできていて、誰もがそのなかで意思を必要とせず生きる。

では、終わらないことはないのではないか。終わりということを、私たちは知らないで終わるだけではないか。


不毛な自問自答は、答えを持たない。
神ですら、持ち得ない解答は、この方舟にはつまれていないのだ。


コーヒーを飲み干す。
カーディガンを羽織る。

靴を履く。
紐を結ぶ。

時計を見る。【時刻8:30分】

「いってきます。」


誰もいない空間が愛しく感じた。
誰もいないのに、いってらっしゃいが聞こえた気がした。




おはよう、新しい、朝。





~END~

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