スロウ・メロウ


どちらが言ったわけじゃねえけど、完全に勝負になっていた。


がむしゃらになって走って。百メートル先のゴールを目指した。


まだ――俺が勝ってる


そう思ってスパートをかけた時だった。隣を風がビュンと駆け抜けていった。


「……っそ」


抜かれた。完璧に抜かれた。ラストあと少しって所で、やられた。


風が抜けていくように、最後まで駆けた山代は俺に勝った。くそっ、負けたか…


「俺の……勝ちだな」


そう言って口角を上げた。すっげえ悔しいのに不思議と胸は軽い。


「次はわかんねーよ」

「よく言うぜ……」


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