スロウ・メロウ


「10円足りない」


……そうきたか。


あいにく財布はすっからかんだし、諦めろと言ってやるとおばちゃんはにこりと笑う。


「よかよー立て替えとくけん」

「マジかおばちゃん!明日返します愛してる」


そんな愛の安売りをして、また非常階段を駆け上がった。



 ◇


屋上へのドアには鍵が掛けられている。しかし周りはフェンスでそう高くないから軽々と飛び越えられる。


「ほいっ」


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