『真実の月』と『真実の友』
『真実の月』と『真実の友』
ここは雪国。

大きな大きな雪山を、すごい勢いでかけ登って行くウサギの群れがいた。

朝早くから麓を出発したのに、辺りはもう薄暗くなってきていた。

それでもウサギ達のペースは落ちるどころか増すばかり。

しかし疲れて着いていけないウサギが、何匹か群れから遅れをとり始めた。

その中で一番端の方を走っていたピートという小柄なウサギが、足元に違和感を感じた。

「あれれ?地面がない!?」

と思った瞬間、ピートは体制を崩して大きな穴へと落ちてしまった。

暗がりで、足元が見えなかったのだ。

ボフッ。

雪のクッションで体は守られたけど、とても深くて大きな穴に落ちてしまった。

「イテテ…。」

ピートはヒョコっと起き上がって上を見上げた。

「どうしよう…。
みんなとはぐれちゃった…。」

今にも泣き出しそうな気持ちをおさえて、ピートは辺りを見渡した。

そして更に泣き出しそうになった。

大きな穴には出口がなかったのだ。

「わ~わ~わ~どうしようどうしよう!?」

ピートはパニックになり、無造作に走り、暴れ出した。

「うるさいぞっ!騒ぐんじゃねぇっ!」

「っ!!!!!!!!」

突然すぐ近くから、怒鳴り声が聞こえたので、ピートはビクッと体が一瞬震え、固まった。

「あわわわ~なっ…何ぃ?今の声……?」

と、ピートは固まった体を無理やり動かして、声がした方を見た。

「ん?」

そこには大きな白い塊があった。

「雪をかぶった岩かなぁ?」

ピートは恐る恐る、その塊に近づいた。

「それ以上近づくなっ!」

ビクッ!!!!!!!

ピートは飛び跳ね、塊から逃げる様に離れた。

「俺に近づくと、食っちまうぞ!」

白い塊は、ブルブルと雪を振り払う様に震えた。

そして姿を現した!

「うわぁ~!!!!!
くっ…クマだぁぁ~~~!!!!!」

そう…白い塊はシロクマだったのだ。

「食べないで食べないで食べないで食べないで…」

ピートはビクビクと震えたながら丸くなった。

「それ以上騒ぐと、本当に食っちまうぞっ!」

「食べなっ…………」
「…………」
「…………」

し~~ん。

「静かにしてたら食べない?」

ピートは恐る恐る小さな小さな声で訊ねた。

「お前一匹食べたところで、どうせ助からないしな。」

シロクマは面倒くさそうに答えた。

ピートはその言葉を聞いて、少し安心して、体の力が抜けた。
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