『真実の月』と『真実の友』
シロクマは片手でピートを持ち、その手を肩の辺りに持ってきた。

そして足を踏ん張り…

「うおぉぉぉーーーーーーーっ!」

と叫ぶと、その手を勢いよく空に向かって伸ばした。

手が伸びきると同時に、ピートはシロクマの手から離れて飛んでいった。

ボフッ!

着地した場所は、穴の外の地面だった。

「……助けてくれたの?」

ピートが起き上がり、そう思った瞬間…。

ドスーーーンっ!

という凄い音が響いた。

音は穴の中からだった。

ピートは恐る恐る穴を覗き込むと、シロクマが仰向けになり、大の字になって倒れていた。

今の音は、シロクマの倒れた音だった。

「どうして…どうして助けてくれたの?」

ピートは穴に向かって叫んだ。

「お前が夢を…夢を持っていたからかな…。
俺は全てを諦めていた…。
でもお前は、絶望の中でも最後まで諦めなかった…。
ただ……ただ、そんなお前の力になりたいと思っただけだ。」

シロクマの声は、今にも途絶えそうな小さなものだったが、ピートの大きな耳は、全てを聞き取っていた。

「ありがとう…本当にありがとう!
シロクマさん…少しだけ待ってて!
『真実の月』を見たら、必ず助けに戻ってくるから!
絶対に諦めちゃダメだよ!」

「どうやって助けるっていうんだ?
もう俺の事は気にするな。」

「絶対に助けるから!
ねぇシロクマさん!
シロクマさんの夢を教えてよ!」

ピートは唐突にそんな事を訊ねた。

「夢……。
そうだな……。
友達が欲しかったな……。
ただ群れるだけの仲間じゃなく……『真実の友』が欲しかった。」

シロクマは力無く答えた。

「わかった!
それじゃあ一緒に探しに行こう!
『真実の友』を探しに行こうよ!」

「…。
そうだな…生きて出られたらな…。」

「約束だよ!?
約束したからね!
僕が戻って来るまで、少しの間待ってて!
絶対諦めちゃダメだからね!」

ピートの叫びもむなしく、シロクマからの返事は返ってこなかった。

そしてピートは走り出した…真実の丘へと…。

走る事数分。

シロクマの言った通り、真実の丘は近くにあった。

そしてその丘には、数十匹のウサギが同じ方向を見上げて、静止していた。

駆け付けたピートも、同じ方向を見上げた。

そこにはとても大きく、神々しいまでの光を放つ、満月があった。
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