『真実の月』と『真実の友』
「これが…『真実の月』」

ここまで困難な道のりを忘れさせるほど、それは美しく、心が癒やされた。

「はっ…!」

ピートは『真実の月』に見とれていたが、我に返った。

そして叫んだ。

「みんなぁ!
お願いがあるんだ!」

後方からの叫び声に、ウサギの群れも我に返り、一斉に振り返った。

ピートは今までの経緯を話した。

穴に落ちたこと。

シロクマに会ったこと。

シロクマに助けられたこと。

そして…シロクマを助けたいことを、皆に伝えた。

「シロクマなんてほっときなよ!
弱ってたって獣は獣だよ!」

「そうだよ、腹ペコなら助けたって、僕達が食べられちゃうよ!」

「そうだね…シロクマなんて見るのも恐いよ。」

ウサギの群れからは良い返事は返ってこなかった。

これが現実…?

シロクマの言った通り、仲間なんてこんなものなのかもしれないと、ピートが落胆したその時、一匹の目鼻立ちの整った、ハンサムなウサギが叫んだ。

「君たちは今何を見たんだ!?
そんな汚い気持ちで、こんな美しい月を見て、恥ずかしいとは思わないのか!?
彼が群れからはぐれたのに、気づいた者はいるか!?」

誰も反応しなかった。

ハンサムなウサギは話しを続けた。

「僕たちは『真実の月』を見たいという私利私欲に捕らわれ、仲間の危機に気付かなかった!
それをどうだろう?
そのシロクマは、自分の食への欲求を抑えて、夢を持つウサギの命を救ってくれた!
どっちが獣だっ!?」

そう言い終えると、ハンサムなウサギは、一番後方にいる、ピートのもとへと向かった。

「シロクマを助けよう!」

「うん、ありがとう。」

ピートは笑顔で答えた。

「待って、僕も行くよ!」

「僕もっ!」

「衰弱してるなら、助けた後に襲われそうになっても、逃げればいいんだ。」

「そうだね、僕たちの俊足があれば逃げ切れる!」

「よ~し…みんなでシロクマを助けるぞーーー!」

「オーーーーーーー!!!!!」

ウサギの群れは、一匹残らず賛同した。

「ありがとう…みんなありがとう。」

ピートは大粒の涙を流しながら、何度もお礼を言った。

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