『真実の月』と『真実の友』
「よし!
まずは手分けして、シロクマを助け出す為の道具を探そう!」

ハンサムなウサギが訴えると、皆散らばり道具を探し始めた。

そして数分後。

「みんな~良い物を見つけたよ~。」

数匹のウサギが、太くて長い、丈夫そうなロープを抱えて持って来た。

「多分人間の忘れ物だ。」

人間も月を見に来ていたのだろう。

「よしっ、それでシロクマを引き上げよう!」

そしてウサギの群れは、シロクマのいる穴へと向かった。

目的地に付き、ピートが穴を覗き込んだ。

「うわぁ!」

ピートは突然声をあげた。

同時に、後ろで固まっているウサギの群れが、一斉にビクッとした。

目の前に鋭い爪があったから、驚いたのだ。

「爪?」

ピートは恐る恐るもう一度覗き込んだ。

そこにはすぐ目の前に、シロクマの手があった。

「シロクマさん…諦めなかったんだね…。」

ピートはシロクマの足元を見て、目に涙を浮かべてつぶやいた。

シロクマの足元には、大きな大きな雪の階段があった。

そこは、ピートが作った雪の階段の場所だった。

「戻って来たのか…?
でもこれ以上は無理だ。
これ以上雪を積んでも崩れちまう。」

シロクマは力無く、振り絞るように声を出した。

「大丈夫!
今から引き上げるから!
さぁ、このロープに捕まって!」

ピートはそう言って、ロープをたらした。

「引き上げる?
お前一匹で引き上げられる訳ないだろう?」

シロクマはロープを受け取らなかった。
「一匹じゃないよ。
言っただろ?
僕には仲間がいるって。」

ウサギの群れも、穴を覗き込んだ。

シロクマはそれを確認すると無言でロープを握り締めた。

そして小さくつぶやいた。

「…ありがとう…。」

それを聞き取ったウサギ達は、顔を見合わせ微笑んだ。

シロクマはロープを体に巻き付けて固定した。

「ほんの少しでいいから、引き上げてくれ。
手が届けば自力で這い上がる。」

「わかった!」

ウサギ達は、ロープを握りしめた。

「それじゃあいくよ~!」

「オーーーーーーっ!」

掛け声と共に、皆一斉にロープを引っ張った。

「ソーレ、ソーレ、ソーレ、ソーレ!」

少しずつだが、シロクマの体を持ち上げ始めた。

そして…。

ガシッ!

シロクマの手が、地上へと届いた。
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