『真実の月』と『真実の友』
しかしシロクマは這い上がれないでいた。

思っていた以上に、シロクマには体力が残っていなかったのだ。

「みんな~もっと力を入れて~!
もう一踏ん張りだぁ!」

それに気付いたピートが、更にみんなをあおる。

「ソーレ、ソーレ、ソーレ、ソーレ!」

ウサギ達の引っ張る力と、シロクマの最後の踏ん張りで、ようやく地上へと引き上げる事ができた。

「ハァハァハァハァ…。」

「ハァハァハァハァ…。」

「ハァハァハァハァ…。」

ウサギの群れも、シロクマも横たわり、息切れをしていた。

「やったぁ~!」

ピートは息が整うと、大声で叫んだ。

「みんなありがとう…。」

シロクマは横になったままだったが、ウサギ達にお礼を言った。

ウサギ達は皆立ち上がり、シロクマを囲むように集まった。

もとよりあったシロクマに対する恐怖はなくなっていた。

「大丈夫?」

「立てるかい?」

ウサギ達は心配そうに、シロクマに話しかけた。

「大丈夫だ…。」

シロクマは弱々しくそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。

「僕たちはもう行くけど、後は大丈夫だね。」

ハンサムなウサギがシロクマに言った。

「ああ大丈夫だ。
ありがとう。」

「いやいやこちらこそ仲間を助けてくれてありがとうございました。」

ウサギ達は一斉にシロクマに頭を下げた。

「それじゃあね。」

そして、シロクマとウサギ達は、別々の方向へと歩き始めた。

「みんなぁ、僕はシロクマさんと一緒に行くよ。」

ピートがウサギの群れ達に言った。

「どうしてだい?
一緒に帰ろうよ。」

「ごめんね。
僕、シロクマさんと約束したんだ。
一緒に『真実の友』を探そうって。」

「……。
どうしても行くのかい?」

ハンサムなウサギが、心配そうに訊ねた。

「うん……。」

「わかった。
それじゃここでお別れだね。」

「ありがとう。
みんな帰りは気を付けてね。」

「うん。
君も体に気を付けて。」

「それじゃあね。」

そう言ってピートは、シロクマのところへ走って行った。

「何しに来たんだ?」
シロクマが無愛想に言った。

「一緒に『真実の友』を探すって約束したじゃないか。
シロクマさんが『真実の友』を見つけるまで、どこまでもついて行くからね。」

「そうか…。
好きにしろ。」
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