dye


白はきれいな色。一番純粋な色。
黒は汚い色。一番暗黒な色。


いろんな色を白に混ぜるだけ白は元の姿には戻れなくなる。
いろんな色を黒に混ぜるだけ黒はすべてを取り込んでいく。



あの日から10年。

私は身長が高くなった。体重が増えた。

季節は巡り、今は12月。
外を見ればあたり一面銀世界。


「今日は出かけるからあるもの食べてなさい。」
『…』

お母さんはなにもかも変わってしまった。
キラキラしたブランド物で着飾りあの男と出て行く。

お母さんに対しての気持ちは悲しみから憎しみに変わった。


『…帰ってこなくていい…のに』

年に一度のクリスマス。
そして私の誕生日でもある。

『おめでとう…緋凪。今日で16歳…』

一本のろうそくに火をつけぼんやり眺める。

(赤は…あたっかい…)



私はいつの間にか寝てしまったんだ。


パンッ

静かな空間に痛々しい音が響く。


「家が燃えてしまったらどうするのよ!」
『…』
「ほんと…困るわ…今からでも出て行かせてもいいのよ!」

母はこんなこと言う人じゃなかった。

全部こいつのせいだ!

「なんだ?その目は…」

私は男を睨む。

「親に向かってなんだ?その態度」
『いっ…』

髪を鷲掴みされる。


「糞餓鬼には仕置きが必要だな」

男はにやにやしながら言ってくる。


これからが地獄だった。
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