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カツカツカツ
「おい生きてんのか?化けもんだぞ」
「失礼だ」
「失礼もくそもあるかー」
黒髪の男に顎をくいっと上げられ目線をあわせられる。
「瞳孔が開きっぱなしだ。いつからこんな状態なんだ?」
『…』
彼の金の瞳に吸い込まれそうで言葉がでない。
「声も出せねえってか…もう結構飯も食ってねえだろ。」
「何でそんなことわかんだよ」
「周りを見ろ。ろくなもん食わしてもらえなかったらしい。しかも全部吐いてる」
「拷問だなこりゃ」
男は顎から手を離し私の鎖、綱を解き始める。
「たばこ押しつけられた後に水でもかけられたのか?」
私は頷いた。
「あいつらの下ならやりそうだな」
「足も折られてるな」
「逃げようにも逃げれないってやつか」
男は内ポケットからなにか取り出した。
「これ飲め」
得体の知れない白くて小さな薬のようなものに拒絶反応を起こす。
「毒じゃねえ飲め」
小さく首を横に振る。
「たくっ…竜(リン)水」
「どうぞ」
私の目の前の男はペットボトルを受け取ると自分の口に薬と水を含み私に口づけた。
要は口移し。
『んっ…!』
喉に走るピリピリとした痛み。男が口を離した途端眠気が私を襲う。
「ちょっと辛抱だ」
そして私は意識を手放した。