365日+1日嬉しくなっちゃう言葉たち。短編集!
はぁ…
オレは
ため息をつきながら
廊下をウロウロしていた。
ウロウロしか出来なかったが正しいが…。
あまりにも長時間
美々は頑張ってくれているのに、
オレというか男ってさ
こういう時には
本当に何も出来ない。
壁を1枚隔てた向こうから、
弱々しい声が聞こえてきた。
えっ!
オレは嬉しさというか不安な気持ちでいたが
「 細谷さん!
早く来てください!
早く!! 」
あまりの慌てように
オレは驚いて
ドアにぶつかりながら中に入った。
「 宏貴…。 」
汗だくな顔と
今まで聞いたことのない消えそうな声
オレの心臓は止まるかと思った。
「 パパ…
男の子ですよ。 」
オレの胸に抱いた息子は
小さくて
本当に小さくて
会えた嬉しさと
美々の長時間の戦いに涙があふれた。
「 オト…
はじめまして…
これからよろしくね。 」
小さな息子に伝えると
「 うぎゃっ! 」
小さく返事してくれて
さらに涙があふれて止まらなくなった。
大切な息子を
すぐに看護師さんに預けた。
「 美々…
ありがとう頑張ったね。
オレ、何もできなくって…。 」
美々は小さく首をふり
オレに左手をのばして
オレは左手を両手で包んで
「 宏貴…
私こそ、ありがとう。 」
やっぱり消えそうな声に
涙が止まることはないようだ。