。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
叔父貴―――…だったら何故―――?
目をまばたいて、あたしは懸命に叔父貴の表情を汲み取ろうとした。
だけど切なげに眉を寄せるその表情から、悲しみ以外の何も読み取れない。
漆黒の瞳が、照明を落とした部屋の中で灰色に濁って見えた。
だけどすぐにいつもの険しい光を取り戻し、黒曜石のような透き通るような瞳の中に鈍く光るものを見る。
「お前を誰にも渡したくない」
低く囁かれて、叔父貴はあたしの手の甲にそっと口付けを落とした。
さらりとした感触が手の甲を掠めて、
本能的に―――
そう、あたしの中に眠る危険信号が赤く点滅した。
叔父貴はいつだってあたしに優しかった。
あたしが嫌がることは絶対にしない。(たまに叱られるけど)
いつもこの大きな手のひらであたしを包み、守ってくれていた。
だけど
今は―――……
「放してよ!」
ほとんど怒鳴り声のような叫び声を挙げて、あたしは叔父貴の手を振り切った。
何故そう叫んだのか、自分でも驚いたぐらいだ。
あたしの爪が叔父貴の頬を引っかき、頬にきれいな赤い線を描く。
それほど強く振り払ったってことだろう。
すぐに赤い血がにじみ出た。
赤い―――血―――