。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
照明を落とした部屋で、俺たちは二人肩を並べて目を閉じていた。
上を向いている響輔は眠っているのかどうか分からない。
イチの攻撃にやられて疲れ切っていそうだったから、寝たかもしれない。
俺は―――
薄暗い天井を見つめながら、その暗闇に彩芽さんの姿を思い浮かべていた。
鼻に触れるとまたあの香りが漂ってきそうで、俺は手を下ろした。
―――敵なのだろうか。
味方か。
金魚を朔羅に届けにきた―――って言ってたけど、それは口実なような気がした。
三日と言うブランクがあるし、そもそもわざわざ届けなくても、電話で朔羅に伝えれば言いだけの話だ。
それにわざと俺を挑発するようなあの物言い―――
何か負に落ちない―――
何かが引っかかる。
あの香りが―――
俺の思考を惑わす。
考えながら俺は横を向いた。すぐ傍に響輔の顔がある。
「あの女何モンやろな」
独り言を呟くと、
「彩芽さんのことですか?美人でしたね」
響輔が目を閉じたまま口を開いた。
何だ、寝てなかったんかよ。
「あの人―――、一結とは違った危険な匂いがする。
戒さん―――気をつけてくださいよ」
響輔が僅かに目を開くと、暗い天井を睨むようにしてぽつりと呟いた。