。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「―――…お前が居れば?」
戒が大きな目をゆっくりとまばたき、あたしを切なそうに見下ろす。
言ってしまって、はっとなった。
しまった!
きちんと順序立てて説明するつもりが、中途半端な告白になっちまった。
慌てて口をつぐんで金魚鉢に目を向けると、
金魚は美しい赤い尾をひらつかせながら、水槽の中を優雅に泳いでいた。
自由きままに泳ぐ金魚たちは、あたしが前に見た金魚よりもやっぱり大きく見えて、
でもそれは―――
目の錯覚なんだ。
金魚が大きくなったわけじゃなく、あたしの視界をいびつに歪ませているのはこの硝子の方で―――
「どうした?金魚が心配だったのか?だったら大丈夫だぜ。俺が可愛がってるからな」
戒が得意げになって言う。
いつも通りの戒だった。
ちょっと生意気で、俺様口調で―――(実際、俺様なんだけどネ)
でも
「安心しろよ。大丈夫だから」
たった一言だけ呟いた言葉はあったくて、優しくて
金魚のことを言ってるってのもあったけど、でも
それ以外の何かを―――こいつは言葉に含ませていた。