。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



思えばこいつはあたしが何かを言ったり聞かなくても、


いつもこいつは何かを悟っているような答えを返してくる。


今だって―――


いつもは鬱陶しいぐらいべったりでくっつきたがるのに、一定感覚を保った距離を詰めようとしない。


いつもの癖なのだろうか、一瞬あたしに触れそうになった手を僅かに挙げて、でもすぐにその手をゆっくり下ろした。



戒がすごく気を遣ってくれてるってのは分かった。


いつまでもうだうだ悩んでいるあたしを、こいつは攻めてこないし、聞いてこない。




優しい戒。




あたしはそんな戒が―――





大好きなんだ。




錯覚なんかじゃない。


大人はみんな「錯覚じゃないか」そう言う。


(鴇田にも言われた)


彼女たちから見れば、あたしはまだほんの子供で、彼女たちが経験してきた“恋愛”とは比べ物にならないぐらい幼いものかもしれない。


彼女たちが経験した恋愛がホンモノなら、あたしのは彼女たちの目に“ままごと”と映ってるかもしれない。


でもあたしにとって、この恋はホンモノで、絶対的なものなんだ。


いつも一生懸命なんだ。





失いたくないよ







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