。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「戒―――大事な話が……」
意を決して口を開きかけたときだった。
「お嬢、ここで何されてるんですか?」
いつの間にか入り口に立っていたマサが、顔をしかめて腕を組んでいた。
ゲ
何でこいつぁ、いっつもいっつも間の悪い。
「…え、えっと!」
しかも急だったから言い訳も浮かばないで焦々。
「金魚を朔羅さんにもらったのはいいんですけど、名前決めるのに迷っちゃって」
戒がメガネの口調でにこにこ笑顔を浮かべた。
「で、朔羅さんは迷ったら好きな人の名前を付ければいいんじゃない?って言ってくれたから、僕……
金魚たちに“キョウスケ”と“マサ・タク”ってつけました♪」
ぅおお!戒!!おめぇすっげぇな!!そんな嘘がペラペラと!!
しかも全く悪意を感じさせない可愛くて爽やか天使ヴォイス。
「へ、変な名前つけんじゃねぇ!」
案の定、戒のエンジェルスマイルにやられてか、マサが顔色を悪くして後ずさった。
「だってこの子たちぜんいん男の子だって朔羅さんが…」
しかもちゃっかりあたしのせいにしてやがるし。(確かに言ったケド)
いつもならここで引き下がっていくマサだけど、
「お嬢、とりあえずお部屋にお戻りくだせえ。年頃の娘さんがこんな時間に男の部屋に居るのは良くありません」
年頃の娘さんだぁ??
やけに真面目な顔つきで、いつになく真剣に言い放つマサに腕を引かれた。
ど、どうしたんだよ、マサ…
いつもは戒のこの発言に顔色を悪くして逃げてくってのに。
マサはあたしの腕を引きながら、戒を射抜くように睨んだ。