。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「デート…」
戒はもう一度口の中で呟いて、僅かに咳払いをして顔をちょっと逸らした。
「いや!予定があるんならいいし!!急に誘ったあたしもあたしだから!!」
慌てて言って、それでも戒が何を考えてるのか不安になってあたしは戒の顔を覗き込んだ。
戒の横顔は僅かに赤く色づいていて、僅かに眉が下がっている。捨てられそうな仔犬みたいな目だった。
それでもあたしと目が合うと慌てて顔を振った。
「わり!急だったし、お前から誘われるなんて考えてなかったから俺も動揺しちまって」
「そ、そうだよな!ごめん!!あたし無計画で…」
「いいよ。すっげぇ嬉しい。
しようよ。デート」
戒のきれいな顔はほんのわずか赤くなっていて、恥ずかしそうに俯きながらあたしの両手をそっと握ってきた。
デート…
言うんだ……今日こそ言うんだ。
―――
しっかし、デートって言ってもどこへ行きゃいいんだ?
あたしってちゃんとしたデートしたこと無いから分かんない。
マンガや雑誌で読んだことがあるデート特集では
テーマパークで遊んだり、
→ってかこの時間から??帰る時間もあるし、そんなに遊べないし。(そもそも遊ぶのが目的じゃない)
夜景の見える豪華レストランでお食事。
→あたしら高校生だっつうの!無理っ
カラオケではしゃぐ、公園でまったり。
→カラオケは何気に良く行って今更だし、公園でまったりとかこの夏の日にゃ熱中症で次語り合うときが病院なんてなりそうだ。
ついでに言うと近くであの変態ドクターが聞き耳を立てているに違いない。
それだけはぜってぇいや!
誘ったのはあたしだし、どこか行き先決めないと。
あせあせしていると、
「あ、俺行きたいとこある。ついてきて」
と戒があたしの手を握って、歩き出した。