。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
戒はまったく不自然じゃない仕草であたしの手を握り、指の間に自分の指を絡めてくる。
久しぶりの恋人繋ぎにドキドキしながら、あたしは一歩後ろをトコトコとついていった。
戒って……こうゆうところ本当にスマート。あたしの気持ちを常に先回りしていつも不自然じゃないリードしてくれる。
そのうちに戒が歩調を緩め、あたしと並ぶと
「ごめん。歩くの早かったか?」と聞いてきた。
「う、ううん!そんなことないっ!」
ただ―――考えてただけ。
どうやって切り出そう、とか。
並んで歩いたら、考えに集中できない気がしたし。
ってか手を繋いでる時点で考えがまとまんねぇんだけどな。
「並んで歩こうぜ~」
戒がにこっと白い歯を見せて笑う。
口調はいつも通り軽いし、笑ってる筈なのに……整った眉尻が下っていて笑顔がぎこちなかった。
あたしの手を握る戒の手に一瞬だけ力が入る。
戒は僅かに俯くと、笑顔を拭い去り唇を引き結んだ。
「並んで歩きたい」
俯いたまま小さく……でもその声ははっきりと、戒の意思が強く現れていた。
こいつだって―――きっと不安なんだ。
あたしの「デートしよう」って提案に嬉しそうにしてたけど。
もしかして「お別れのデートかも」って不安に思ってるかもしれない。
そんなことないよ。
あたしだって怖い。
叔父貴とキスしたっていったら、戒が離れていっちゃうかもしれない。
でもあたしは―――
この手を離したくない。
一緒に隣を歩いていきたい。