。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
その差があたしと叔父貴の力の差。
ほんの一瞬が命取りになる場数を叔父貴はあたしが計り知れないほど経験してきた。
「落ち着け!手荒なことはしない!」
叔父貴はそう声を上げて、あたしの腕を掴んできた。
掴まれた手が痛くて、思わず凝視する。
叔父貴がそう言ったなら間違いないし、必死で宥めようとする顔を見てその言葉が信じれる―――筈
だったけど、
叔父貴の頬に走った赤い色がまるであたしを挑発するかのように、嘲っていたように思えた。
何故、赤い色はこんなにも闘争心を煽るんだろう。
闘牛ってきっとこんな感じなんだろうか。
目の前の人物が危険を伴っていないと分かりきっているのに、本能的な部分であたしの闘争心が燃え盛る。
あたしは空いた方の手を頭の後ろに回し、素早くかんざしを抜き取った。
鈴音姐さん(スズネネサン:戒のお母さん)が結ってくれたときにつけてくれたかんざしだ。
小さな桜の花びらがいくつもくっついて枝に見せた金属の先でゆらゆら揺れるタイプのもの。
櫛部分も同じ金属製で、先が尖っている。
殺傷能力は、ってかさすがにあたしも叔父貴に殺意を覚えたわけじゃないけど、それでも少しの痛手を負わせることができる。
そのかんざしを逆手に持って振り上げたけど、
「!」
パシッ
叔父貴にまたも阻止された。
ぐぐっ…とあたしの手首を力強く握ってくる。
「朔羅!頼むから落ち着いてくれ。俺が悪かった」
困り果ててくぐもった叔父貴の声が遠くで聞こえ、
でもその声は
知らない誰かの声に聞こえた。