。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
香水を代えること考えたのは、正直言ってたった今。
花火大会以来つけてなかったけど、代えるのが一番いいかもしれない。
「…あ、うん……次何にしようかなって思って」
「前の無くなったん?」
またも聞いてきて、あたしは俯いた。
「無くなった」って言えば簡単なのに、それすらもちゃんと言えない。
叔父貴から貰った香水を代えることに、深い意味なんてないよ。
そう言いたかったけれど、何だか言い訳がましいし。
それにこいつの前で言い訳しても、たぶん嘘だと見透かされるだろうし。
でも何か答えなきゃ―――と考えていると、
「俺、朔羅の香水結構好きやったんやけど」
戒が目の前に並ぶ香水瓶をぼんやりと眺めながら、ぽつりと漏らす。
戒―――…
ふいに握った手に力が篭り、(痛いって程じゃないけど)
ぐいと引き寄せられる。
「俺、あの香り好きなんやけど。
代えんで」
今度はさっきのあやふやな言葉じゃなくて、はっきりとあたしの鼓膜を震わせた。
戒……
戒は知らないから。叔父貴とあの日何があったのか、知らないから。
何があったか知ったら、きっとそんなこと思わないよ。
それとも香水を代えるあたしの真意に薄々勘付いている?
言わなきゃ……今こそ言うタイミングだ。
「か、戒!あたしね…」
そう言いかけたときだった。
「これ~!これだ、探して香水!」と言って、近くで女の人の声があがった。