。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「イチはともかく、彩芽さんはまったく無関係じゃね?いや、無関係って言うか、あの人何かを企んでるって感じじゃないぞ?」
あたしが言うと、
「そうだよな」
と、それでもどこか納得のいってないように戒が口の中でブツブツ。
あたしは俯いてすっかりぬるくなった紅茶に口を付けると、
「ワリ。話が変な方向いっちまって。今日はせっかくのデートだって言うのにな」
戒が申し訳なさそうに、あたしを覗き込んできた。
「いや!大丈夫!!」
ってか急に誘ったのはあたしの方だし。
肝心なことを言い出さないあたしが悪い。
だけど
「もうこんな時間か」
戒が腕時計に視線を落として、ぼんやりと外を見た。
さっき薄紅色に染まっていた空は、今は殆ど濃い紫色に変わっている。
あたしも時間を確認すると、もう7時を超えていた。
「今日は二人ともバイトが4時あがりだ」と言う事をマサは知ってる。
二人とも帰りが遅くなるわけにはいかない。
「………帰らないとな…」
あたしもぼんやりと外を眺めてぽつりと言うと、戒が真剣な目で一瞬だけあたしの手を強く引いてきた。
「まだ……、一緒に…」
あたしは目を開いて戒を見たが、戒はすぐに苦笑いに変えて
「ワリ。今のは気にするな」
それだけ言って立ち上がった。