。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
電源を落としたままのケータイに視線を落とし、
ちょっと考えた。
あたし……
あたしが今一緒に居たいって思う人は―――
あたしが今笑顔で喋りたい、手を繋ぎたいって思う人は―――
「戒……」
まだ一緒に居たいよ。まだ離れたくないよ。
「戒」
あたしは慌てて雑誌をしまうと、戒が居るであろう文庫本の新刊コーナーに向った。
だけど戒は居なくて。
「戒?」
戒、どこ―――?
たった数分離れていただけなのに、あたしの手はもう冷たくなってる。
戒の握ってくれた手。あったかい体温。
あたしの手はこんなにも戒のぬくもりを求めている。
一緒に居たい。
戒
「見つけた!どこいっとったん?」
ふわっ
優しいのに力強い、不思議な感触な手に腕を掴まれて、
ふいに戒の低くてくすぐるような甘さを含んだ、覚えのある関西弁を聞いた。
あたしの目に思わず涙が浮かんだ。
「戒―――良かった…」