。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
戒の手を握って、あたしはひたすらに歩いた。
戒は目的地を言わないあたしに不思議そうにはしていたけど、あれこれ聞いてくることなく大人しくついてきた。
やがてあたしたちが辿り付いた場所は―――
一度…いや正確には二度来たことがある場所。
「えっと…お前が来たかったとこってここ?」
戒が戸惑ったように、白い建物を見る。
周りはキラキラど派手なピンク色のネオンサイン。
昼間見るより、その色が下品に際立って輝いているように見えるは、今はそれが安易に想像できるリアルな時間帯だからだろうか。
あたしは戒の手を一層強く握りしめ、
「あたし、今日は帰りたくない。今日はここに泊まる。
戒……あたしを今すぐお嫁さんにして」
言ってて顔から火を出しそうなぐらい恥ずかしかったが、思い切って言うと、
「え…、それってどーゆう……」
と、こっちが拍子抜けするような戸惑った戒の答えが返ってきた。
「ここがどこでどーゆうところか、見りゃ分かんだろ!!」
思わず怒鳴って、その建物を見上げて、
いかにもラブホテルっぽい安っぽいホテル名の看板を目配せした。
「いや…そりゃ分かるけど…お前酔ってる??まさかさっきのパスタに変なもん入ってたんじゃねぇだろうな」
「酔ってねぇよ。あたしゃシラフだ!」
そう言って
ぐいっと戒を強引に入り口まで連れて行った。
こんな―――…
女から誘うなんて、はしたないかな。
戒には淫乱女って思われたかもしれない。
でも、
あたしが次にしたいって思うのは
やっぱり戒だから―――
戒しか要らないから。