。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



戒の手を握って、あたしはひたすらに歩いた。


戒は目的地を言わないあたしに不思議そうにはしていたけど、あれこれ聞いてくることなく大人しくついてきた。


やがてあたしたちが辿り付いた場所は―――


一度…いや正確には二度来たことがある場所。


「えっと…お前が来たかったとこってここ?」


戒が戸惑ったように、白い建物を見る。


周りはキラキラど派手なピンク色のネオンサイン。


昼間見るより、その色が下品に際立って輝いているように見えるは、今はそれが安易に想像できるリアルな時間帯だからだろうか。


あたしは戒の手を一層強く握りしめ、





「あたし、今日は帰りたくない。今日はここに泊まる。



戒……あたしを今すぐお嫁さんにして」




言ってて顔から火を出しそうなぐらい恥ずかしかったが、思い切って言うと、


「え…、それってどーゆう……」


と、こっちが拍子抜けするような戸惑った戒の答えが返ってきた。


「ここがどこでどーゆうところか、見りゃ分かんだろ!!」


思わず怒鳴って、その建物を見上げて、


いかにもラブホテルっぽい安っぽいホテル名の看板を目配せした。


「いや…そりゃ分かるけど…お前酔ってる??まさかさっきのパスタに変なもん入ってたんじゃねぇだろうな」


「酔ってねぇよ。あたしゃシラフだ!」


そう言って


ぐいっと戒を強引に入り口まで連れて行った。


こんな―――…


女から誘うなんて、はしたないかな。


戒には淫乱女って思われたかもしれない。


でも、


あたしが次にしたいって思うのは




やっぱり戒だから―――




戒しか要らないから。




< 139 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop