。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


戒はあたしの話に一切口を挟まずに黙って聞いていた。


時折大きな目を細めて、射るように睨む視線はあたしを―――と言うよりも、どこか違う場所を彷徨っていた。


一通り喋り終えて、一気に喋って気が抜けたって言うのか、あたしは項垂れるように湯に浮かんだ泡を見つめた。


戒も口を閉ざし、二人でバスタブに浸かり始めた頃の沈黙とは違った種類の重苦しい空気がバスルームを満たしているように思えた。





「……今まで黙っててごめん。嫌になるよね」





重苦しい空気を押し破るようにあたしがぽつりと漏らすと、言葉と同時に湯の上にぽつりと水滴が落ちた。


泣くな―――…


泣いたらダメ。こんなところで泣いたら戒が困るに決まってる。


必死に歯を食いしばって涙を堪えていると、






「何で?別に嫌にならへんよ」





戒の声は今までで一番甘くて優しいもので、温かい手のひらがあたしの頭をそっと撫で上げた。


え―――……



目を開いた瞬間に堪えていた涙が溢れそうになった。慌てて鼻を啜ると、


「てか、顔あげろよ」と戒があたしを覗き込んでくる。


「……む、無理…」


だって今顔上げたら、あたし間違いなく泣いちまうだろうし。


そんなの――――


そんなの……か……戒が……困るに―――決まってるじゃん……






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